●日時:平成28年7月3日(日)9:30~13:00
●講師:武部 純 氏
クオリティオブライフ(QOL)の概念が浸透し、快適性、咀嚼満足度、審美性が強く求められる時代となりました。生涯にわたり快適な生活の営
みを求める時代となってきた現在、これに応えるべく、病める人々(患者さん)の訴え(主訴)の背景(疾病、病苦)にあるライフサイクル(時間
の推移、価値観の変化)を考慮した包括的な歯科医療が日々の臨床において求められてきます。補綴歯科臨床では、人工装置として位置づけられる
補綴装置を用いて、顎口腔系の形態と機能の回復(レストレーション)を図り、生体の働きをできるだけ機能的に長く維持(メインテナンス)して
いくこと、そして、多くの人々が健康的に生きる手助けをすることにあります。卒後間もないあるいは卒後数年の先生方は、臨床の場に出て経験す
る歯質欠損症例、欠損歯列症例、顎欠損症例を通して、interdisciplinary approach として症例を分析し見極めながら診察・診断、治療計画を立案
し研鑚を積むことと存じます。そこで、本講演では、補綴歯科臨床に対する基礎的知識を整理することに重点を置きながら、適切な歯科医療を実践
していく一助となるような基本的事項と日々の臨床において遭遇すると思われる症例を提示し、症例に対するポイントを含めてお話したいと思い
ます。
本研修会での内容が、皆様の日常臨床の場に少しでも役立てていただけましたら幸いに存じます。
岩手医科大学准教授(講座再編分野統合により歯学部補綴・インプラント学講座)
岩手医科大学附属病院歯科医療センター高度先進補綴科 診療部長
愛知学院大学歯学部有床義歯学講座教授
愛知学院大学歯学部附属病院補綴科(部分欠損修復)診療部長 現在に至る
平成28年7月3日(日)愛知学院大学歯学部附属病院にて、第2回ポストグラデュエートコースが開催されました。 講師に、愛知学院大学歯学部有床義歯学講座の武部純先生をお招きして、「スタートアップ補綴歯科臨床!!若手歯科医師へ向けてのメッセージー明日からの臨床へのヒント、押さえておきたいポイントー」と題してご講演を賜りました。 初めに咬合再構成(オーラルリハビリテーション)について、分かりやすく説明して頂きました。
プロビジョナルレストレーションで補綴物を設定することが大切であり、プロビジョナルレストレーションと、フェイスボウ、ゴシックアーチなどを用いて、咬合器上でなるべく患者さんの咬合状態を再現して治療することの大切さを学べました。最終補綴装置を装着するまでの間、形態や咬合状態などを回復、決定していくための診断や治療の補助的手段としての役割を担っているプロビジョナルレストレーションについても、改めて再認識させて頂きました。
また、卒後若手歯科医師に向けてとのことで、補綴前処置から支台築造方法、支台歯形成方法などの基本的な手技や、オーラルセラミックスの支台歯形成方法で注意しなければいけないことなどを、分かりやすく説明して頂きました。生物学的幅径などの歯周組織に対する配慮や、パソコンで口腔内を3D化して補綴物を決定していく光学印象についても説明して頂き、卒後若手歯科医師に向けてとのことでしたが、ベテランの先生方にとっても大変勉強になるお話でした。 更に、舌機能、咀嚼、構音から見た有床義歯補綴の設計についても説明して頂きました。 超高齢化社会を迎えた日本では現在、サルコペニア(加齢に共なる筋力の低下)からフレイル(脆弱)に陥る高齢者の方々が多くいらっしゃいます。そういった生理的老化や脳血管障害、神筋失陥に起因する運動障害性咀嚼障害や、口腔腫瘍による舌切除に起因する器質性咀嚼障害に対して、咀嚼・嚥下機能の改善を図る必要があります。そのいち手段としての舌接触補助床(PAP)についても説明して頂きました。
今回の講演で、基本的な手技の大切なポイントや、プロビジョナルレストレーションの大切さ、咬合を再構成すること、PAPなどについて深く学べましたが、治療を行っていく上で、患者さんの生活背景、ライフサイクルを見ながら治療を行っていくことも大切だということが学べました。貴重なご講演を行って頂いた武部純先生に深く御礼申し上げます。