ここ数年、歯内療法を取り巻く状況が熱い。講演会や研修会が多く開催され、雑誌で取り上げられる頻度が増加し、書籍が相次ぎ発刊されている。インプラントの氾濫に対する反動とも言える自分の歯を残したいという願いの高まりや、近年の歯内療法に関する機器の進歩により治療内容が視覚化されたことなどにより、現在のブームとも言える状況が出現したのであろう。歯内療法は、インプラントや矯正などのように専門医あるいは深く学んだ歯科医師だけが行えばよい処置ではなく、一般歯科臨床の基本となる処置である。しかし、この基本が難しいことを多くの歯科医師が感じているだけに困っている方も多いのであろう。
このような状況において、演者は平成25、26 年度の日本歯科医師会生涯研修セミナーの講師を担当した。平成25 年度は、歯内療法における感染の機会とその制御法、および感染根管治療の攻略法について解説した。日常行っている診療の中で根管に感染を招いている可能性がある操作を見直したのち、診断に役立つ根管解剖の知識やエックス線診査の要点、長期に根管治療歯を機能させるために必要なコロナルリーケージに関する知識などを解説した。また、平成26 年度は、歯内療法の成功率を確認した後、髄腔開拡、根管の拡大形成から根管充填までを解説した。日常臨床で使用されることが多いステンレス製ファイルの使用法の再考も行い、また、歯内療法において最近トピックスとなっている根管洗浄についても解説を加えた。したがって、この2 年間で歯内療法における主要な項目をほぼ網羅する内容を提供できた。
今回は、この2 年間の内容を一度にまとめて提示することにより、何かと難しいと考えられている歯内療法をやさしく解説し、皆様のエンドへのこだわりを深めていただきたいと考えている。また、偶発症への対応やコアの除去法などに関する情報も可能な限り含めていきたい。
先生方の明日からの臨床に役立つお話を提供したいと考えています。
平成29年9月24日、第2回講演会が開催されました。
講師に木ノ本喜史先生をお招きし、「エンドにこだわるGPになる!」-科学的根拠から具体的な手技、システム作りまで-という演題で講演していただきました。
木ノ本先生は大阪大学で長年研究、指導に携わられた後、現在は吹田市で開業されておられますが、多数の著書を執筆されておられます。まず、感染根管治療においては、根管内の感染除去が大切であるが、感染を取り除くのみならず、新たな感染の防止を意識しながら処置することが、歯内療法において何より重要であると述べられました。そこで根管の感染の機会については・う蝕の取り残し・根管開放・仮封の不良・汚染物の挿入・修復後の再感染があるということで、それぞれ説明いただきました。
また、感染源の除去について、治癒の原理から考えても診療の効率から考えても、感染源の存在が疑われる部位の量の多寡により順序づけして感染源の多いカリエスの除去から取りかかるのがよく、やみくもに根尖部の拡大を行うことは賢明ではないとも述べられました。アイスブレーク的に上下大臼歯と髄腔開拡の絵を受講者に書いてもらって解説していただきました。更に根管洗浄や根管充填の方法についても具体的に細かくお話ししていただきました。そして支台築造の除去方法についてもDDT法やDVT法という臨床にすぐ応用できるテクニックを教えていただきました。最後はコロナルリーケイジを防ぐためにも根充後の修復が重要であるということで話を締めくくられました。
表題にあるようにGPとして明日からの診療に役立つ有意義な講演でした。