●日時:平成30年9月9日(日)9:30~17:00
●講師:月星 光博 氏
●日時:平成30年9月9日(日)9:30~17:00
●講師:月星 太介 氏
月星 光博 氏
自家歯牙移植は、同一個人においてある部位から別の部位へ外科的に歯を移動する処置ですが、同じ歯槽窩内で歯の位置や傾斜を外科的に変更させる外科的矯正もこの範疇に含まれる処置です。また、何らかの理由によりいったん歯を抜歯し、口腔外で治療を行った後に元の歯槽窩に戻すような治療(意図的再植)も自家歯牙移植の一つと考えられます。このように移植にはいくつかの治療法があり、多くの適応症の可能性があります。インプラントというきわめて予知性の高い治療法が歯科を席巻しつつある現在、安易な抜歯が危惧されます。しかし、その前に自家歯牙移植による歯と歯列の保存的治療の可能性を検討してみてもよいかもしれません。
近年、患者の口腔内にインプラント治療が施術してある症例は少なくない。インプラントの成功率は10年以上経過で86%〜95%と論文や報告により様々ではあるが、本当に安心して全ての患者に対し勧められるオプションだろうか。最近ではインプラント治療の増加とともに、粘膜炎やインプラント周囲炎の問題が浮き彫りになっている。このインプラント周囲炎はどのような原因から引き起こされるのか。その原因を知ることでリスクを低下させ、また、予知性の高いインプラント治療が提供できるのではないだろうか。
そこで今回の講演では、手術環境や材料が限られている開業医が無理をせずに予知性の高いインプラント治療を提供するにはどのようなケースセレクション、治療計画を行わなければいけないのか、症例と文献を通じてその可能性を検討していきたい。
歯科医師
歯学博士
大阪大学咀嚼補綴科 招聘教員
American Academy of Implant Dentistry (AAID) Associate Fellow
平成30年9月9日(日)、本年度第2回目の愛知学院大学歯学部ポストグラデュエートコースが開催されました。今回は「トランスプラントBeforeインプラント」の演題で月星光博先生、「開業医が安心してできるインプラント」という演題で月星太介先生にご講演いただきました。ご存知のとおり、お二人は親子で開業なさっておられますが、PGCの講演会で親子のコラボで講演していただいたことは初めてです。
まず、始めの月星光博先生の講演は演題のごとく欠損が生じた場合、インプラントによる補綴を考える前に移植可能な智歯があるといった条件が整った患者さんには自家歯牙移植という選択肢を考えてはどうか?という提言を元に歯牙移植の具体的術式や注意事項を話していただきました。実際の症例を数多く提示していただきましたが歯根未完成歯の移植に関しては、ほぼ100%の成功率であることから期間は限定されるが是非トライしてほしいと述べられました。また付随して脱臼歯の再植についても「歯牙保存液よりも牛乳に浸けて保存した方が成功率が高い」など数多くの経験をなされた先生ならではのお話が聞けました。他に意図的再植法などについても教えていただきました。
続いて月星太介先生は先生が行なってこられたインプラント治療を振り返って、問題点とその対策について考察し、開業医が安心してできるインプラント治療を追求したいとの趣旨で講演されました。始めにインプラントのリスクファクターや安心してできるインプラント治療の原則という基本的事項について話された後、抜歯後のソケットプリザベーションの必要性に触れられ、その問題点を解決するため独自で行っておられるレイトソケットプリザベーションという方法を紹介されました。これは抜歯後3〜4週後に再度抜歯窩掻爬しソケットプリザベーションする方法で抜歯と同時にやる場合よりメリットがあると述べられました。そして、2次手術の際の角化歯肉獲得の重要性を話され、遊離歯肉移植術(FGC)結合組織移植術(CTG)の紹介、その後の上部構造製作のための印象方法や固定方式の違い、メインテナンスの重要性についても言及されました。
改めて、予知性の高いインプラント治療を行う場合、守るべき基本的事項の重要性と自家歯牙移植の有用性について学んだ有意義な1日でした。