PGC.journal

第2回講演

知の巨人が語る歯科の未来~知恵を養い、繋がりを育む~

歯科の世界はこんなにおもしろい
-小児歯科診療から食育、口腔機能まで-

●日時:2022年10月16日(日)9:30~12:30
●講師:岡崎 好秀

講師からのメッセージ

演者は,診療終了後に小児を笑顔で帰すことを“心に貯金をする”と表現している。心に貯金をすると,いつまでも来てくれる患者になる。
これが小児歯科にとって,最も大切なことだと思い診療を行ってきた。
目の前の小児の診療をしながら,頭の中に80歳で28歯が残存している口腔を頭の中に思い描く。 泣き暴れていれば,“強制治療を行なえば良いのか?”,“トレーニングをしている間に齲蝕が進行しても良いのか?”。そして“どのように保護者に伝えれば,もっと歯に興味を持ってくれるのか?”,あるいは“どのように付き合えば,いつまでも来てくれる患者さんになるのか?”。さらには“対社会的にどのような活動をすれば,その目標が達成できるのか?”。こう考えると,一歯科医師として大切にすべきことが見えて来る。
ところで,“現代社会における成功”とは 何だろう? 演者は「楽しく・有意義に仕事をしながら食べていける」ことだと思う。歯科界は,以前と比べ厳しい状況にあるが,それが可能な数少ない仕事の一つである。そういう意味で“恵まれた仕事”であるし,この仕事に従事していることに感謝しなくてはならない。
でも毎日,診療室で患者さんの歯ばかり見ていると,自分の仕事の持つ意味が見えなくなりがちである。・・・ということで,今日は小児歯科診療や口腔機能発達不全症,さらに食育にまつわる深いイイ話,元気になる話をしながら,歯科医療の持つ意味について考えてみたい。

講演内容

  1. 今日の子どもは,明日の大人
  2. 私メッセージ・あなたメッセージ
  3. 何故,口呼吸が増えるのか?
  4. 乳歯列の変化 第1世代から第4世代まで
  5. 動物園の動物達も高齢化
  6. 赤いこいのぼりはいくつありますか?

略歴

1978年
愛知学院大学歯学部卒業
大阪大学小児歯科 医員
1984年~2014年
岡山大学歯学部小児歯科 講師(歯学博士 岡山大学)
2013年
国立モンゴル医学・科学大学 客員教授
2018年4月~2020年3月
岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター 診療講師

所属学会

日本小児歯科学会:指導医
日本障害者歯科学会:認定医 評議員
日本口腔衛生学会:認定医
禁煙科学会:学術委員
国際歯科学士会(ICD)会員 

専門

小児歯科・障がい児歯科・健康教育

最近の文献

  1. 世界最強の歯科保健指導 上・中巻(下巻 執筆中) クインテッセンス出版
  2. 口の中はふしぎがいっぱい エピソードⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ 松風
  3. 小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ クインテッセンス出版
  4. 口腔機能育成外論  連載1~16 小児歯科臨床(2020.8~2021.10)
    他多数

講演後記

令和4年10月16日(日)第2回PGCが開催されました。
午前の部は歯学部楠本校舎で実出席とWeb受講によるハイブリット開催でした。講師に国立モンゴル医学・科学大学 客員教授 岡崎好秀先生をお招きし、演題名『歯科の世界はこんなに面白い 小児歯科診療から食育、こどもの口腔機能まで』でご講演いただきました。
名台詞「子供の心に貯金をすること」から岡崎先生の軽快な講演が始まりました。
保健指導において、生命力のある口を育てる事を目標とすべきであり、乳児期から獲得していく口腔機能の①嚥下②捕食③咀嚼の順番が重要である事を下記の3つの例で説明されました。

  1. 「母乳の深飲み」母乳の飲み方は舌機能や口腔周囲筋機能、口蓋の広がり、顎の発達に影響します。
  2. 「歯固め」歯固めは、鼻呼吸、口唇閉鎖力、舌筋発達、唾液分泌量、嚥下力を増進します。
  3. 「前歯のかじりとり、臼歯の咀嚼」モンゴル遊牧民を例に、骨付き肉を幼少期から食べたり、裸馬に跨る生活で、全身を使いながら正常歯列を獲得していく話は大変興味深い内容でした。 

最後に「仕事とは自分を高める最高のツールである」と明言されていました。数々の岡崎先生の名言を胸に、日々楽しく有意義に臨床に向き合いたいと思います。

午後の部はWeb受講で行われました。講師はにしだわたる糖尿病内科 院長 西田亙先生をお招きし、演題名『令和に求められる歯科医科連携 医科からの信頼と紹介を得るために』でご講演いただきました。
「これから超高齢化社会はピークを迎え、“認知症と介護”がもたらす国難の時代になる」とセンセーショナルなキーワードで始まりました。
「口滅べば国亡ぶ 口健やかなれば国栄う」2007年生まれの半数は107歳まで生き残るとされています。令和は炎症を通じて口腔(歯科)と全身(医科)が繋がるOral Systemic Linkを考える時代であり、それを患者にも分かりやすく伝える重要性をお話頂きました。

  1. 歯周組織の破壊(出血)から全身の感染(菌血症)
  2. 慢性微小炎症から全身への波及(炎症性サイトカイン)
  3. 歯根膜を失うことによる認知症の助長

また医科歯科連携において、診療情報連携共有料を知らない医師が多く、歯科から提供する紹介状の具体例を提示して頂きました。こちらも併せて明日からの臨床に日々精進していきたいと思います。