●日時:2024年9月8日(日)9:30~17:00
●講師:藤原 康生 氏
●日歯生涯研修コード:2903
保育士国家試験では「こどもは口腔や頭部から成長する。口の成長が全身の成長を牽引する」成長の方向性というものの勉強が必須です。しかも子どもの成長には部位や機能ごとにゴールデンタイム(感受性期、敏感期)が存在し、ゴールデンタイムを逃すとその部位や機能はほとんど成長しないということを学びます。たとえば、歯列の大きさは就学時(6歳)には成長のほとんどが終わっており、20歳くらいまで成長し続ける身長や体重などとは、まったく異なるのです。しかも口の成長が子どもの全身の成長を牽引するのですから、「ロコモティブシンドロームの子ども」や「握力や足が育っていない子ども」が増加していることもうなずけます。6歳時点で口腔の成長がほぼ終わっているのであれば、いったいいつから介入すれば、十分な口腔の成長を望めるのかを調べるために、近隣の保育園やこども園に協力していただき、2018年から「0歳からの口腔調査」を開始しました。子どもたち全員の口腔内だけでなく姿勢や足指、構音障害、ロコモティブシンドロームなどの調査を行うことで、不正咬合はいつから始まり、本当に全身の成長と関連があるのかを調べたのです。毎年調査を重ねると驚くべきことが判明したのです。今回の講演では保育調査でわかった過蓋咬合や反対咬合などの不正咬合の原因や、なぜ口腔機能発達不全症を歯科医師が歯も生えていない0歳児から診るようになったのかを詳しく解説します。
熊本県保育協議会 食育アドバイザー
チャイルデント養成講座 指導医
日本摂食支援協会 指導医
顎顔面機能咬合研究会 指導医
保育士国家資格(2018年取得)
介護支援専門員(2008年取得)
令和6年9月8日(日)今年度第1回の愛知学院大学歯学部同窓会が楠元キャンパスにおいて対面とZoomでのWeb受講により開催されました。両方とも多数の方にご参加いただきました。講師には生田歯科院長で保育士、介護支援専門員の資格をお持ちの藤原康生先生をお招きし、「赤ちゃんから始める口腔育成最前線」-哺乳から紐解く不正咬合の始まり-という演題でご講演いただきました。
講義は
Ⅰ.0歳からの保育園調査で分かった過蓋咬合、反対咬合、叢生の原因と呼吸との関係
Ⅱ.口腔育成が足育に直結!?成長の方向性、順序性を知ろう
Ⅲ.効果的なMFTの実践〜お口ぽかんの子どもをなくしましょう〜
Ⅳ.さあ、保育講演に行こう!「保育士に歯科医師が伝えるべき食育3つのこと」
の順に進められました。
Ⅰ.については長年、保育園で口腔調査をやった結果、子どもの成長にはゴールデンタイム(感受性期)が存在し、それは一生に一度しかなく脳や体が最も成長する期間で、その時期に獲得できなかったものは後から獲得できない。脳や歯並びも感受性期での適正な刺激の有無で多様に変化していく。上顎骨の感受性期は0歳〜2歳、生まれてから歯が生えるまでの数ヶ月間が歯並びを決めている。従って哺乳が大切。これによって乳歯の切端咬合を獲得することが過蓋咬合の予防になる。また、発達には順序性があり、1つの機能を獲得すると、その機能を元に次の機能を獲得する。つまり、哺乳機能が完成して初めて次に食べる機能(正常嚥下)が獲得できる。と述べられました。過蓋咬合の子どもは構音障害になりやすいことに関連して子どもが正しく話す条件として①ことば脳の発達②お口(構音器官)の成長があり、それぞれについても詳しいお話が聞けました。
Ⅱ.については人間は上から下、中心から末端に成長していうという方向性がある。つまり、成長の起点である口(頭部)の成長が全身の成長を牽引していく。子どもに適正な口腔を付与すると転倒が減り姿勢も良くなる。と話されました。
Ⅲについては、お口ぽかんの要因として⒈呼吸関連筋(肋間筋など)⒉鼻腔⒊舌の位置⒋口腔内容積(過蓋咬合、発育空隙)があり、それらの呼吸環境を良くする厳選MFTとして1)引きちぎり2)ブクブクトレーニング3)あいうべ体操4)チューブ噛みを紹介されました。
Ⅳについて口腔機能発達不全の子どもと保護者に伝えたい食育3つのこととして①前歯がぶり②足底接地③水やお茶は食後。そして最後に子どもの不正咬合予防は①鼻腔の成長②口腔容積の拡大(切端咬合・発育空隙)③口腔周囲筋の強化(舌、口輪筋など)であり、それらは「かむ哺乳」をしっかりやることで決まる、子どもの咬合を本気で考えるなら、歯科が保育の世界に介入するしかないと締めくくられました。
長年に渡り小児に関わり、研究された経験とデータに裏付けられた、貴重なお話が聞け、大変有意義な時間となりました。